飯舘村蕨平の仮設焼却炉。
(赤い矢印の先には資材化実証施設がある。本文では取り上げない)
飯舘村蕨平で被ばく労働訴訟となっている仮設焼却炉についての問題点を、元エンジニアの筒井哲郎さん(原子力市民委員会/プラント技術者の会)が分析してくださいました。
筒井新聞 369号
(2019年11月2日発行)
-1 短すぎる世代交代
-2 技術者主体の審議会
-3
減容化施設における労働者被ばく←こちら
筆者の筒井さんに伺ったところ、プラントエンジニアリング会社に就職された50年余り前、新入社員のころに、粉体を扱う機械の設計を担当されましたが、流動性の悪い粉体はしばしば詰まりの原因となり、運転開始直後に当該部品の試作と試運転を繰り返し、連日徹夜で試運転を行ったあげく、とうとう倒れて救急車で運ばれ一月入院されたそうです。ご当人は「若気の至り」と恥ずかしがっておられますが、粉体の性状というのはあらかじめ分かりにくく、運転初期に部品の試作と確認運転を繰り返す作業を避けられない性格を持っているとのことです。
減容化施設の焼却灰も、自然物の焼却結果であって、予め性状を一定範囲に予測することは困難で、運転しながら設備の改善を行うことは不可欠な手順です。この焼却施設も例外ではなく、運転開始後も粉体の性状に合わせて設計を修正し、設備自体を改善していくことがエンジニアリング会社としての当然の責務でした。それを行わすに、設備の不備のしわ寄せを作業員の被ばく労働に転嫁したことが明らかに見て取れます。
改めて、除染と放射能ゴミ処理の現場からは原発と同じような搾取の構造が見えてきます。
新人教育の場で「焼却灰はすべて機械で扱うため、あなた方は焼却灰に絶対に触れることはありません」と言われていたものが、いざ施設に入ってみるとその機械が動かず、手作業で行うよう指示される。
すでに最初の時点で「これは契約違反だ」と言って、労働者はストライキを行って抗議すべき事態であったと思いますが、仕事を失いかねない弱い立場がそれを阻んだのであり、元請けはそのような弱い立場につけこんで悪用したのです。
劣悪の度合いに多少の差はあれ、ここが特殊な事例であったということではなく、氷山の一角に過ぎないでしょう。
スポンサーサイト